こんにちは。
この数回の記事では、
- JCA手順
- インターネットEDI
と、日本の流通システムを支えてきた通信技術について振り返ってきました。


そして今回取り上げるのが、
「流通BMS(Business Message Standards)」
です。
名前を聞いたことがある方は、流通システムに関わった経験のある人くらいかもしれません。
しかし、この流通BMSは、日本の流通業界にとって非常に大きな意味を持つ仕組みでした。
今回は、その役割についてお話ししたいと思います。
「つながる」だけでは足りなかった
インターネットEDIが普及したことで、
企業同士は以前より簡単につながるようになりました。
ところが、ここで新しい問題が生まれます。
通信はできる。
でも、
送るデータの内容が会社ごとに違う。
例えば、
ある企業では商品コードを10桁。
別の企業では13桁。
納品日の表現も違う。
数量の単位も違う。
項目の順番も違う。
これでは、
通信できてもデータをそのまま利用できません。
結局、人が変換したり、個別のプログラムを作ったりする必要がありました。
「標準化」という考え方
そこで生まれたのが、
流通BMSです。
簡単に言えば、
「データの書き方も統一しましょう。」
というルールです。
通信方法だけではなく、
- 商品コード
- 発注データ
- 納品データ
- 請求データ
- 返品データ
など、
企業間でやり取りするメッセージ全体を標準化しました。
つまり、
JCA手順が
「どう送るか」
だったとすれば、
流通BMSは
「何をどう書いて送るか」
まで決めたのです。
ベンダーにとっては救世主だった
昔は、
取引先ごとに仕様が違いました。
A社向け。
B社向け。
C社向け。
それぞれ専用プログラムを作る。
修正も別々。
テストも別々。
非常に手間がかかります。
流通BMSが普及すると、
共通仕様で開発できる場面が増えました。
もちろん完全に同じではありませんが、
以前に比べれば開発効率は大きく改善しました。
ベンダーとしては、
本当にありがたい標準化でした。
利用企業にも大きなメリット
恩恵を受けたのはベンダーだけではありません。
メーカー。
卸売業。
小売業。
すべての企業がメリットを受けました。
例えば、
新しい取引先が増えても、
流通BMS対応同士なら接続しやすい。
システム改修も少なく済む。
保守コストも抑えられる。
つまり、
企業間連携のハードルが大きく下がったのです。
それでも普及は簡単ではなかった
ここで誤解してはいけません。
流通BMSは非常に優れた仕組みでした。
しかし、
導入は決して簡単ではありませんでした。
なぜなら、
既存システムを変更しなければならないからです。
長年使ってきたEDIを止める。
新しい仕組みに切り替える。
教育も必要。
テストも必要。
取引先との調整も必要。
これは簡単なことではありません。
私も導入プロジェクトでは、
何度も打ち合わせを重ねました。
技術より、
調整の方が大変だった印象があります。
「標準化」は地味だけれど強い
AIやクラウドは華やかです。
ニュースにもなります。
しかし、
標準化は違います。
目立ちません。
派手さもありません。
でも、
本当に業界全体を変えるのは、
こういう技術なのです。
誰も意識しない。
でも全員が使っている。
私はそれが標準化の一番すごいところだと思っています。
流通BMSはゴールではない
現在では、
API連携。
クラウドサービス。
リアルタイムデータ連携。
新しい技術が次々に登場しています。
その中で、
流通BMSも少しずつ進化しています。
つまり、
流通BMSは完成形ではありません。
その時代に合わせて、
改善され続ける仕組みなのです。
元ベンダーとして感じること
若い頃の私は、
新しい技術ばかりに目が向いていました。
CPUが速くなった。
通信が速くなった。
画面がきれいになった。
もちろん、それも重要です。
しかし経験を重ねると、
本当に価値があるのは、
「みんなが同じルールで仕事ができること」
だと感じるようになりました。
どれほど高性能なシステムでも、
相手とつながらなければ意味がありません。
逆に、
共通ルールがあるだけで、
企業同士は驚くほどスムーズにつながることができます。
若いシステム担当者へ伝えたいこと
今では、
APIやJSON、XMLなどが当たり前になっています。
しかし、
その考え方の根底には、
「データを標準化する」
という思想があります。
流通BMSも、その延長線上にある技術です。
昔の技術だから古いのではありません。
今の技術につながる大切な歴史なのです。
まとめ
流通BMSは、
JCA手順の後継というだけではありません。
インターネットEDIを、
本当に使いやすい仕組みにするための
「最後のピース」
でした。
通信を標準化し、
データを標準化し、
企業同士をもっと自由につなげる。
その考え方は、
現在のクラウドサービスやAPI連携にも受け継がれています。
元ベンダーとして振り返ると、
流通BMSは目立つ技術ではありませんでした。
しかし、
日本の流通システムを一歩前へ進めた、
非常に重要な存在だったと思います。
そして私は、
こうした地味な技術こそ、
本当に業界を支えてきた主役だったのではないかと感じています。



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