営業マンではなくSEを見るべき理由

システム導入

シリーズ:【元ベンダーが教える】小売システム導入 成功の法則 第八回

~契約を取る人と、システムを動かす人は違う~

前回は、

「デモを見て感動してはいけない理由」

というテーマで、システムの画面や機能だけを見てベンダーを判断してはいけない、というお話をしました。

どれだけ画面がきれいでも、

どれだけ最新の機能があっても、

実際に店舗の人が使えなければ意味がありません。

そして、もう一つ大切なことがあります。

それは、

「誰がそのシステムを導入してくれるのか」

ということです。

ベンダー選定のとき、私たちはどうしても営業担当者を見ます。

説明が分かりやすい。

質問への回答が早い。

こちらの話をよく聞いてくれる。

人柄もいい。

「この人なら安心だ。」

そう思うのは当然です。

しかし、元ベンダーの立場から一つだけ言わせてもらうと、

契約を取る人と、システムを導入する人は、同じとは限りません。

そして実際にプロジェクトが始まった後、

毎日のように一緒に仕事をするのは、

営業担当者ではなく、

SEやプロジェクトマネージャー

であることが多いのです。

だから私は、

「ベンダーの会社を見るだけでなく、実際に担当する人を見る」

ことを強くおすすめします。


営業マンが悪いわけではない

最初に誤解のないようにしておきたいと思います。

私は営業担当者を軽視しているわけではありません。

むしろ、優秀な営業担当者は非常に重要です。

お客様の課題を聞く。

社内のSEにつなぐ。

見積をまとめる。

契約を調整する。

ハードウェアの手配をする。

トラブルが起きたときには、お客様と社内の間に入る。

営業担当者が果たす役割は大きいです。

ただ、

営業とSEでは、役割が違います。

営業は、

「お客様の要望を聞いて、ベンダーとしてどう提案するか」

を考える人。

SEは、

「その提案を、実際のシステムとしてどう実現するか」

を考える人です。

どちらも必要です。

しかし、システム導入が始まると、

SEやプロジェクトマネージャーの力量がプロジェクトの成否に大きく影響する

ことがあります。


コンペでは営業マンが一番目立つ

コンペでは、営業担当者が前面に出ます。

当然です。

プレゼンテーションをする。

質問に答える。

価格交渉をする。

ベンダーの代表として話をする。

そのため、

「この営業担当者なら安心だ。」

という印象でベンダーを決めてしまうことがあります。

もちろん、それが悪いわけではありません。

でも、ここで一度考えてみてください。

「契約した後、この人はどこまでプロジェクトに関わるのだろう?」

営業担当者が最後までプロジェクトを担当するケースもあります。

しかし、ある程度規模の大きなシステム導入では、

契約後にSEやプロジェクトマネージャーが中心になることも多いでしょう。

だからこそ、

「実際に導入を担当する人を紹介してください。」

とお願いしてみる価値があります。


SEとは何をする人なのか

そもそもSEという言葉は、一般の方には少し分かりにくいかもしれません。

SEは、

System Engineer(システムエンジニア)

の略です。

簡単に言えば、

「お客様の業務を、実際のシステムに落とし込む人」

です。

例えば、

お客様が、

「店舗の発注作業を簡単にしたい。」

と言ったとします。

営業担当者は、

「それなら、当社の発注システムで実現できます。」

と提案する。

しかし、ここからがSEの仕事です。

どの商品を対象にするのか。

発注数量はどう計算するのか。

店舗ごとにルールは違うのか。

発注締め時間は何時なのか。

発注後に変更できるのか。

欠品した場合はどうするのか。

本部では何を確認するのか。

店舗では誰が操作するのか。

こうした細かな業務を一つずつ整理して、

「実際に使えるシステム」にしていく

のがSEの重要な仕事です。


「この人は現場を分かっている」と感じるSE

私がSEを見るときに一番重要だと思うのは、

「システムの話だけをしないか」

ということです。

例えば、

「この画面で発注できます。」

だけではなく、

「発注担当者は、通常この画面を朝一番に使うと思います。その場合、この情報を上に表示した方がいいと思います。」

という話ができる。

これは、

システムではなく、仕事を見ている

ということです。

小売業のシステムでは、

こうした視点が非常に重要です。


良いSEは「なぜ?」と聞いてくる

SEと打ち合わせをしていて、

「なぜ、この処理をしているのですか?」

「この数字は、誰が見ているのですか?」

「この作業は毎日必要ですか?」

と質問されることがあります。

一見すると、

「そんなことまで聞くの?」

と思うかもしれません。

でも、私はこういうSEを高く評価します。

なぜなら、

「今の業務をそのままシステム化しようとしていない」

からです。

その業務が本当に必要なのか。

もっと簡単にできないか。

そもそも別の方法がないか。

そこまで考えているのです。


「今のシステムと同じにしてください」への対応を見る

小売システムの入れ替えでは、

「今のシステムと同じようにしてください。」

という要望がよくあります。

当然です。

長年使ってきたシステムですから、

現場は今のやり方に慣れています。

しかし、優秀なSEなら、

「分かりました。今と同じにします。」

だけでは終わりません。

「なぜ、この操作が必要なのですか?」

と聞いてくるはずです。

そして、

「もし目的がこれなら、こちらの方法の方が簡単かもしれません。」

と提案してくれる。

これが、

単なるシステム屋と、業務を理解するSEの違い

だと私は思います。


SEの質問の仕方を見てほしい

コンペや打ち合わせでは、

SEがどんな質問をするのか

を見てみてください。

例えば、

「現在の発注方法を教えてください。」

だけではなく、

「発注担当者は何人ですか?」

「一人あたり何商品くらい見ていますか?」

「発注時間はどのくらいかかっていますか?」

「発注数量を最終的に誰が確認していますか?」

「特売商品は通常商品と発注方法が違いますか?」

ここまで聞いてくる。

すると、

「この人は、かなり現場を理解しようとしているな。」

と感じると思います。


「できます」ではなく「こうした方がいい」と言えるか

前回の記事でも、

「できます」という言葉には注意しましょう、

という話をしました。

SEを見るときも同じです。

お客様が、

「こういう機能が欲しい。」

と言ったときに、

「できます。」

だけで終わるSE。

一方、

「できます。ただ、今のお話を聞くと、その方法よりこちらの方が運用しやすいと思います。」

と言うSE。

私は、

後者を信頼します。

なぜなら、

お客様の要望をそのままシステムにするのではなく、

目的を理解して、その目的に合った方法を考えている

からです。


SEにも得意分野がある

ここも覚えておいてほしいポイントです。

「SEなら誰でも同じ」

ではありません。

例えば、

  • POSが得意なSE
  • 物流が得意なSE
  • EDIが得意なSE
  • 在庫管理が得意なSE
  • 会計システムが得意なSE
  • データ分析が得意なSE
  • ネットワークが得意なSE

など、それぞれ得意分野があります。

小売システムでは、

店舗業務を理解しているSE

が特に重要になるケースがあります。

だから、

「御社のSEは優秀ですか?」

と聞くより、

「今回のプロジェクトを担当するSEは、どのような経験がありますか?」

と聞いた方がいいでしょう。


「同じ業界の経験」を聞いてみる

例えば食品スーパーなら、

「食品スーパーの導入経験はありますか?」

と聞いてみる。

さらに、

「同じくらいの店舗数の導入経験はありますか?」

「発注・在庫・POSをまとめて導入した経験はありますか?」

などと聞いてみる。

ここまで聞けば、

単なる「導入実績○○社」という数字より、

はるかに具体的な経験値が分かります。


SEが「店舗」を知っているか

小売システムでは、

店舗を知らないSEが苦労することがあります。

本部の会議室で、

「この機能を追加しましょう。」

と言うのは簡単です。

でも、

実際の店舗では、

レジが忙しい。

バックヤードが狭い。

発注担当者は一人しかいない。

パートさんが交代する。

ピーク時間には端末を触れない。

そんな事情があります。

だから、

「店舗を見たことがあるか」

は重要な質問です。

もし可能なら、

「今回の導入前に、実際の店舗を見てもらえますか?」

とお願いしてみてください。

店舗を見れば、

会議室だけでは分からないことがたくさん見えてきます。


「質問に答えられるか」だけでなく「質問できるか」

SEを見るとき、

「こちらの質問にちゃんと答えられるか」

を見るのは当然です。

しかし、もう一つ重要なのが、

「SEからこちらに質問が出てくるか」

です。

こちらが何も説明していないのに、

「それはどういう意味ですか?」

「その処理は誰がやっていますか?」

「そのデータはどこから来ていますか?」

と聞いてくる。

私は、

こういうSEを信頼します。

逆に、

お客様が話していることを、

「はい、はい。」

と聞いているだけ。

そして最後に、

「では、そのようにシステムを作ります。」

と言う。

これは少し注意が必要です。


優秀なSEほど「分からない」と言う

これも意外かもしれません。

優秀なSEは、

何でも即答するわけではありません。

むしろ、

「そこは今の情報だけでは判断できません。」

「一度、技術担当に確認します。」

「その仕様にすると別の部分に影響が出る可能性があります。」

と慎重に答えることがあります。

私は、

これは信頼できる対応だと思います。

システムは非常に複雑です。

その場で分からないことがあるのは当然です。

問題は、

分からないことを、

分かったふりをすること

です。


SEと営業の関係を見る

実は、

営業とSEの関係も重要です。

例えば営業が、

「できます。」

と話した後に、

SEが、

「それは少し難しいです。」

と言う。

こういうことが起きたら、

「どちらが正しいんだ?」

と思うでしょう。

しかし、実はこのときこそ、

ベンダー内部のコミュニケーションを見るチャンス

です。

営業とSEが、

「では、どういう方法なら実現できるか。」

と解決方法を前向きに話し合う。

これは良い状態です。

逆に、

営業が勝手に約束し、

SEが後から困っている。

これは危険です。

何か問題が発生した時には、営業とSEがしっかりと情報共有をして

問題解決に向けて協力し合えるかは

プロジェクト成功のためにとても大切な事です。

なぜなら、営業とSEでは役割分担が違うから。

ベンダーの営業とSEがしっかりコミュニケーションを取れていることが

プロジェクト成功のためにはとても重要な事なのです。


契約前に「導入チーム」を見せてもらう

私なら、

ベンダー選定の最終段階で、

こんなお願いをします。

「契約後に実際に担当する予定のメンバーをご紹介いただけますか?」

そして、

  • プロジェクトマネージャー
  • 主担当SE
  • サブSE
  • 保守担当

などを確認します。

もちろん、

契約前なので正式決定していない場合もあるでしょう。

それは構いません。

重要なのは、

「どんな体制で、このプロジェクトを進めるつもりなのか」

を確認することです。


「担当者が変わる可能性」は確認しておく

システム導入には、

数か月から、

場合によっては1年以上かかることがあります。

その間に、

担当者が異動する。

退職する。

別のプロジェクトへ移る。

ということもあります。

だから、

「プロジェクト途中で担当者が変わった場合、どのように引き継ぎますか?」

と聞いてみるのもいいでしょう。

優秀なSEがいることは重要です。

しかし、

一人のSEだけに依存していない体制

も重要です。


「このSEに任せたい」と思えるか

最終的には、

非常にシンプルです。

SEと話をして、

「この人になら、現場の問題を相談できそうだ。」

と思えるかどうか。

これが大切です。

システム導入では、

必ず、

「想定外」

が起こります。

そのとき、

「この人に相談しよう。」

と思えるSEがいることは、

大きな安心になります。


ベンダー選定でSEを見る7つのポイント

ここまでの話を整理してみましょう。

① 小売業務を理解しているか

システムの知識だけでなく、店舗の仕事を知っているか。

② 同じ業態・規模の導入経験があるか

「導入実績○○社」だけで判断しない。

③ 「なぜ?」と質問してくるか

業務の背景まで理解しようとしているか。

④ 何でも「できます」と言わないか

できないこと、難しいことも正直に説明するか。

⑤ 現場を見ようとするか

実際の店舗や現場を理解しようとしているか。

⑥ 営業との連携ができているか

営業とSEで情報共有ができているか。

⑦ 「この人に相談したい」と思えるか

最後は人としての信頼感です。


そして、もう一人見るべき人がいる

ここまでSEについてお話ししました。

しかし、

実はもう一人、

ぜひ見てほしい人がいます。

それが、

プロジェクトマネージャー(PM)

です。

大規模なシステム導入では、

SEが個々のシステムや業務を担当し、

PMが全体を管理します。

スケジュール。

課題。

予算。

品質。

ベンダー側の体制。

お客様側との調整。

これらをまとめる役割です。

どれだけ優秀なSEが揃っていても、

プロジェクト全体をまとめる人が弱いと、

プロジェクトは迷走します。

だから可能なら、

「今回のプロジェクトマネージャーは誰ですか?」

も確認してください。


PMを見るなら「悪いニュースをどう伝えるか」を見る

PMの力量が出るのは、

順調なときではありません。

問題が起きたときです。

例えば、

「スケジュールが2週間遅れそうです。」

という状況になった。

そのとき、

「大丈夫です。何とかします。」

だけで終わるPMより、

「現状では2週間遅れる可能性があります。原因は○○です。対策として△△を行います。ただし、その場合は□□に影響が出ます。」

と説明するPMの方が信頼できます。

つまり、

悪いニュースを早く、正確に伝えられる人

です。

これも、ベンダー選定では重要なポイントだと思います。


「営業マンが良かったから選んだ」は危険

最後に、

元ベンダーとして一番伝えたいことがあります。

営業担当者が素晴らしい。

これは、とても良いことです。

しかし、

営業担当者だけを見てベンダーを選ぶのは危険です。

営業は、

「会社の顔」

です。

SEは、

「システムの顔」

です。

PMは、

「プロジェクトの司令塔」

です。

そして保守担当者は、

「導入後の相談相手」

です。

だから、

会社だけを見るのではなく、その会社の「チーム」を見る。

これが重要なのです。


まとめ

ベンダー選定では、

どうしても、

営業担当者の印象が強くなります。

説明がうまい。

人柄がいい。

レスポンスが早い。

もちろん、それは重要です。

しかし、

システム導入が始まった後、

本当に一緒に仕事をするのは、

SEやプロジェクトマネージャーです。

だから、

「この会社なら大丈夫」

だけではなく、

「このチームなら大丈夫」

というところまで確認してほしいと思います。

そして、SEを見るときは、

  • 業務を理解しているか
  • 「なぜ?」と質問するか
  • 現場を見ようとするか
  • できないことも正直に言えるか
  • 同じ業態の経験があるか
  • 営業との連携が取れているか
  • この人に相談したいと思えるか

を見てください。

システムは、

人が作り、人が導入し、人が支えるものです。

どれだけ優れた製品でも、

それを導入する人たちとの相性が悪ければ、

プロジェクトは苦しくなります。

逆に、

「この人たちとなら、一緒に問題を解決できそうだ。」

と思えるチームに出会えれば、

多少の問題が起きても、

乗り越えられる可能性は高くなります。

元ベンダーからのワンポイントアドバイス

ぜひ一度、

「今回のプロジェクトを実際に担当するSEの方と、直接話をさせてもらえますか?」

とお願いしてみてください。

そして、

「御社のシステムの一番の強みは何ですか?」

ではなく、

「今回のプロジェクトで、一番難しいと思っているところはどこですか?」

と聞いてみてください。

さらに、

「もし御社が私たちの会社だったら、今回の導入で一番注意することは何ですか?」

と聞いてみる。

そこで、

具体的な答えが返ってくるか。

現場のことを考えているか。

リスクを理解しているか。

そして何より、

「この人なら、問題が起きたときに相談できそうだ」

と思えるか。

そこを見てください。

システム導入で本当に買っているものは、

ソフトウェアだけではありません。

そのソフトウェアを一緒に育てていく「人」も含めて買っている

と私は思っています。


次回は、

「見積書では見えない導入コスト」

です。

「このベンダーが一番安い。」

そう思って契約したのに、導入が始まってから追加費用が次々に発生する。

実は、システム導入では珍しいことではありません。

ソフトウェアの価格だけでは見えない、

データ移行、教育、機器、ネットワーク、現場の人件費、追加開発……

そうした「見えないコスト」について、次回は元ベンダーの視点から掘り下げてみたいと思います。

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