RFPが曖昧だとプロジェクトは最初から失敗している

システム導入

シリーズ:【元ベンダーが教える】小売システム導入 成功の法則 第二回

~システム導入の成否は、ベンダー選定前に決まっている~

前回の記事では、

「小売システム導入が失敗する原因は、システムそのものではなく、導入の進め方にある」

というお話をしました。

では、その「最初の一歩」とは何でしょうか。

私は迷わずこう答えます。

RFP(提案依頼書)です。

実は、ベンダーを選ぶ前のこの一枚の資料が、その後のプロジェクト全体を左右すると言っても過言ではありません。

今回は、元ベンダーとして数多くの提案活動に携わってきた経験から、「良いRFP」と「悪いRFP」の違いについてお話ししたいと思います。

RFPとは何か

RFPとは「Request for Proposal」の略で、日本語では「提案依頼書」と呼ばれます。

簡単に言えば、

「私たちは、こんなシステムを導入したいので提案してください」

という企業からベンダーへの依頼書です。

ここには通常、

  • 導入の目的
  • 現在の業務内容
  • 解決したい課題
  • 希望する機能
  • 導入スケジュール
  • 提案してほしい内容

などが書かれます。

つまり、ベンダーはこのRFPをもとに提案書を作り、見積もりを作成し、プロジェクトの進め方を考えるのです。

「とりあえず見積もりをください」は危険な始まり

私がベンダー時代によくいただいた依頼の一つが、

「今のシステムが古くなったので、見積もりをお願いします。」

というものでした。

もちろん、お客様としては自然な依頼です。

しかし、これだけでは提案のしようがありません。

例えば、

「在庫管理を改善したい」のか。

「発注業務を効率化したい」のか。

「店舗作業を減らしたい」のか。

目的によって、提案内容は大きく変わります。

目的が曖昧なままでは、ベンダーは過去の実績をもとに「一般的な提案」をするしかありません。

もちろん、ベンダーとしては、見積もるために

お客様の要望の聞き取りをします。

しかし、お客様の中でシステムを変更する目的が明確になっていないと

結果、良い提案には繋がらないことが多いです。

ベンダーは「書かれていないこと」は分からない

システム会社だから何でも分かる。

そう思われることがあります。

しかし、それは誤解です。

ベンダーはシステムの専門家ではありますが、

お客様の業務の専門家ではありません。

例えば、

店舗独自の運用。

長年続けてきた発注ルール。

特定の商品だけの例外処理。

こうしたことは、RFPや打ち合わせで共有されなければ知ることができません。

「言わなくても分かるだろう。」

これが一番危険なのです。

良いRFPは「機能」ではなく「目的」を書く

RFPを書くとき、多くの企業は機能一覧を作ろうとします。

もちろん、それも大切です。

しかし、それ以上に重要なのは、

「なぜ、その機能が必要なのか」

を書くことです。

例えば、

「自動発注機能がほしい。」

だけでは不十分です。

「発注担当者の負担を減らしたい。」

「欠品を減らしたい。」

「新人でも一定の品質で発注できるようにしたい。」

こうした目的が分かれば、

ベンダーはより適切な提案ができます。

同じ機能でも、目的が違えば最適な設計は変わるからです。

良いRFPには「現状の課題」が書かれている

私が「良いRFPだな」と感じた企業には共通点がありました。

それは、

現状を正直に書いていることです。

例えば、

  • 発注担当者によって精度にばらつきがある
  • 商品マスターの整備が追いついていない
  • 店舗によって運用方法が違う
  • ベテラン社員に業務が属人化している

こうした課題が書かれていると、

ベンダーは「どのように改善できるか」を具体的に考えることができます。

逆に、

課題が見えないRFPでは、

表面的な提案しかできません。

RFPは「ベンダーを試す問題集」ではない

時々、

「あえて詳しく書かず、ベンダーの提案力を見たい。」

という考え方を耳にします。

気持ちは分かります。

しかし私はおすすめしません。

情報が少なければ、

どのベンダーも推測で提案するしかありません。

結果として、

比較しにくい提案書が並びます。

ベンダーを試すより、

お互いに情報を共有し、より良い提案を引き出す。

その方が、導入成功の可能性は高まります。

元ベンダーとして忘れられないRFP

ある会社のRFPには、

こんな一文が書かれていました。

「発注業務にかかる時間を、今の半分の時間に短縮したい。」

機能の話ではありません。

現場の未来を書いていたのです。

この一文を読んだとき、

私たちベンダーの提案チームは、

「どうすれば半分の時間に短縮できるだろう。」

という視点で議論を始めました。

その結果、

当初想定していなかった改善案まで提案することができました。

RFPとは、

機能一覧を書く書類ではありません。

ベンダーに「何を実現したいのか」を伝えるための設計図なのです。

RFPを書く前に考えてほしい5つの質問

もしこれからシステム導入を検討するなら、まず次の5つを整理してみてください。

  1. なぜ今、システムを更新するのか。
  2. 一番困っている業務は何か。
  3. 導入後、何が改善されれば成功と言えるのか。
  4. 現場は何に困っているのか。
  5. ベンダーにどんな提案を期待するのか。

この5つが明確になるだけでも、RFPの質は大きく変わります。

まとめ

システム導入は、

ベンダー選びから始まるのではありません。

その前の、

RFP作りから始まっています。

RFPが曖昧なら、

ベンダーの提案も曖昧になります。

見積もりも比較できません。

プロジェクトも途中で迷走しやすくなります。

逆に、

目的と課題が整理されたRFPは、

ベンダーの力を最大限に引き出します。

私は20年以上、小売システムの提案に携わってきましたが、

提案のしやすい会社ほど、私たちのモチベーションも上がり

導入もうまくいくことが多いと感じてきました。

それは偶然ではありません。

良いRFPは、良いプロジェクトの第一歩だからです。

元ベンダーからのワンポイントアドバイス

RFPは、ベンダーを評価するための書類ではありません。

「自社がどんな会社になりたいのか」を整理するための書類です。

良いRFPを書ける会社は、自社の課題を理解している会社です。

そして、そのような会社ほどシステム導入も成功する可能性が高いと

私は現場で何度も感じてきました。

次回は、

「コンペで勝つベンダーと、導入で成功するベンダーは違う」

というテーマで、プレゼンが上手な会社と、本当に現場を支えられる会社の違いについてお話ししたいと思います。

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