シリーズ:【元ベンダーが教える】小売システム導入 成功の法則 第三回
- ~プレゼンの点数だけでは、本当の実力は分からない~
- コンペは「本番」ではない
- プレゼンが上手な会社は、本当に強い
- 「実績があります」の中身を見る
- コンペでは「できること」が強調される
- 私がベンダー側なら、むしろ「できない」と言いたい
- 本当に見るべきなのは「導入チーム」
- 「営業担当」と「導入担当」は別の人
- デモは「成功するように作られている」
- 「例外処理」を質問してみる
- 「質問に対する答え方」を見る
- コンペの点数表にも限界がある
- 「一緒にトラブルを乗り越えられるか」
- コンペで聞いてほしい5つの質問
- コンペで「負けた会社」が実は良かった、ということもある
- 良いベンダーは「売らない」こともある
- コンペは「ベンダーを選ぶ場」ではない
- まとめ
~プレゼンの点数だけでは、本当の実力は分からない~
前回は、
というテーマで、システム導入におけるRFPの重要性についてお話ししました。
RFPを作り、複数のベンダーから提案を受ける。
そして、いよいよベンダーを選ぶ。
多くの企業では、ここで「コンペ」が行われます。
価格。
機能。
提案内容。
プレゼンテーション。
デモ。
これらを評価して、一番点数の高かった会社を選ぶ。
一見すると、とても合理的な方法です。
しかし、元ベンダーの立場から言わせてもらうと、
コンペで勝つベンダーと、導入で成功するベンダーは、必ずしも同じではありません。
これは、ベンダーを批判しているわけではありません。
私自身、ベンダー側としてコンペに参加していたからこそ分かることがあります。
今回は、その「コンペでは見えにくい部分」についてお話しします。
コンペは「本番」ではない
まず、最初に理解しておいてほしいことがあります。
コンペは、
システム導入の本番ではありません。
あくまで、
「この会社に任せても大丈夫そうだ」
と判断してもらうための場です。
当然、ベンダー側も本気です。
営業担当。
SE。
プロジェクト責任者。
場合によっては会社の上層部まで参加します。
提案書も何度も作り直します。
デモも入念に準備します。
プレゼンの練習もします。
つまり、ベンダーにとってコンペは「勝負の日」です。
当然、最も優秀なメンバーを投入します。
ここに一つ、注意すべきポイントがあります。
その日に来た人たちが、導入後もずっと担当するとは限らない。
ということです。
プレゼンが上手な会社は、本当に強い
もちろん、プレゼンが上手なことは悪いことではありません。
むしろ、
「自分たちのシステムを分かりやすく説明できる」
というのは、ベンダーにとって重要な能力です。
しかし、
説明が上手いことと、システム導入が上手いことは別の能力です。
例えば、
プレゼンでは、
「このシステムを導入すれば、店舗作業を20%削減できます。」
と説明されたとします。
聞いている側としては、
「それならぜひ導入したい。」
と思うかもしれません。
でも、
「なぜ20%削減できるのですか?」
と聞いてみると、
「同業他社で実績があります。」
だけだったりする。
ここは、もう一歩踏み込んで質問してみる必要があります。
「実績があります」の中身を見る
ベンダー選定では、
「導入実績があります。」
という言葉がよく出てきます。
もちろん実績は重要です。
しかし、
どんな会社で、どんな条件で、どんな結果が出たのか
まで確認しなければ、本当の意味での実績とは言えません。
例えば、
「食品スーパーで多数の導入実績があります。」
と言われた場合、
店舗数は?
売上規模は?
店舗の業態は?
既存システムは?
導入範囲は?
カスタマイズは?
導入期間は?
導入後にどのような成果が出たのか?
ここまで聞いてみる。
すると、
「実績がある」
という言葉の意味が、かなり具体的になってきます。
コンペでは「できること」が強調される
ベンダーの提案書には、
「できます」
がたくさん並びます。
当然です。
提案なのですから、
できないことを延々と説明しても受注にはつながりません。
しかし、システム導入で重要なのは、
「できること」だけではありません。
むしろ、
「できないこと」
「標準では対応できないこと」
「追加費用が必要なこと」
「運用を変更してもらう必要があること」
を、きちんと説明してくれるベンダーの方が信頼できます。
私がベンダー側なら、むしろ「できない」と言いたい
これは少し矛盾して聞こえるかもしれません。
ベンダーとしてコンペに参加しているのに、
「それはできません。」
と言えば、負けてしまうかもしれません。
実際、営業としては非常に悩ましいところです。
しかし、長い目で見ると、
無理な約束をして受注する方が、はるかに危険です。
「できます」と言って契約した。
↓
詳細設計に入った。
↓
実は標準機能ではできない。
↓
カスタマイズが必要。
↓
追加費用が発生。
↓
お客様とベンダーの関係が悪くなる。
こういうケースは、決して珍しくありません。
だから私は、
「できること」だけでなく、「できないこと」をどう説明するか
を見てほしいと思っています。
私が現役の頃に、とある企業へのコンペに参加した時の話しです。
コンペには、営業とプロジェクト責任者としての私と私の上司が参加しました。
まず、営業が私達の会社の概要と、提案しているシステムの概要を
時に、ユーモアを交えながら
会社 そして システムの素晴らしさを
説明します。
話しがとても上手い優秀な営業であったため
お客様も、かなり興味を示していただけた様子でした。
そして、私がシステムの詳細についての説明と
お客様からの質疑応答の時間となります。
様々な質問に対して、私は
できる事は「はい、システムのこの機能で実現可能です。」
と回答しますが、
難しい内容には
「この機能で、近い事は実現可能と思いますが、運用の変更が必要です。」
とか
「システムのカスタマイズが必要となります」
など、正直に回答しました。
結果、お客様からは「信用できる会社である」
との評価をいただき、受注することができました。
その後、私がプロジェクト責任者として開発・導入を行い
無事に、システムを本稼働させて、お客様からも
高い評価をいただきました。
本当に見るべきなのは「導入チーム」
では、コンペで何を見ればいいのでしょうか。
私が一番見てほしいと思うのは、
実際に導入を担当するチームです。
例えば、
- プロジェクトマネージャーは誰なのか
- 導入SEは誰なのか
- 店舗側との調整担当は誰なのか
- 稼働後のサポート担当は誰なのか
- そのメンバーに同規模の導入経験があるのか
これを確認してください。
コンペのプレゼンが終わった後、
「では、導入を担当する方を紹介してください。」
と聞いてみるのもいいでしょう。
ここで、
「まだ決まっていません。」
という回答だったら、少し注意が必要です。
もちろん、受注前なので決まっていないこと自体は不自然ではありません。
しかし、
「誰が担当する可能性が高いのか」
「どのような体制になるのか」
くらいは確認しておきたいところです。
「営業担当」と「導入担当」は別の人
コンペでは、
非常に優秀な営業担当が登場することがあります。
説明も上手。
質問への回答も早い。
こちらの意図もよく理解してくれる。
「この人なら安心だ。」
と思うでしょう。
ところが契約後、
「これからはSEが担当します。」
となる。
すると、
「あれ?話が違う。」
ということが起きます。
もちろん、営業とSEが役割分担するのは当然です。
問題は、
その引き継ぎがきちんと行われる仕組みになっているか
です。
営業が約束したことを、SEが知らない。
営業が「できます」と言ったことを、SEが「難しい」と言う。
これがプロジェクトの初期に起きると、非常に危険です。
デモは「成功するように作られている」
もう一つ注意したいのが、
デモです。
デモでは、システムの一番良いところを見せます。
これは当然です。
ベンダーだって、自社製品の魅力を伝えたい。
だから、
「発注処理がこんなに簡単です。」
「分析画面はこんなに見やすいです。」
「スマートフォンからも確認できます。」
と、魅力的な機能を見せます。
しかし、実際の業務では、
そんなにきれいなケースばかりではありません。
「例外処理」を質問してみる
小売業の現場には、
例外がたくさんあります。
例えば、
- 商品が突然欠品した
- 予定数量と実納品数が違った
- 店舗によって運用が違う
- 商品マスターに不備があった
- 通信が止まった
- 発注後に数量を変更した
- 返品が発生した
こうした、
「うまくいかなかったときにどうするのか」
を質問してみてください。
実は、ここにベンダーの実力が出ます。
「それもできます。」
だけではなく、
「この場合は標準機能で対応できます。」
「これは運用で回避します。」
「ここはカスタマイズが必要です。」
「このケースはシステムだけでは解決できないので、店舗運用を変更する必要があります。」
このように具体的に説明できるベンダーは、信頼できます。
「質問に対する答え方」を見る
私は、ベンダー選定では、
答えそのものより、答え方を見ることが大切
だと思っています。
例えば、少し難しい質問をしたとします。
そこで、
「できます!」
と即答する会社。
一方で、
「そこは確認が必要です。標準機能では難しい可能性がありますので、技術担当と確認して回答します。」
と答える会社。
どちらが頼もしく見えるでしょうか。
その場では前者かもしれません。
しかし、長く付き合うなら、
私は後者の方が信頼できます。
分からないことを、
「分からない」と言える会社
は強い会社です。
コンペの点数表にも限界がある
多くの企業では、
「機能:30点」
「価格:20点」
「提案内容:20点」
「会社実績:10点」
「プレゼン:20点」
というような評価表を作ります。
これは公平性を保つためには非常に有効です。
しかし、
「導入後に本当にうまくいくか」
という項目を点数化するのは難しい。
なぜなら、
導入成功には、
人間関係。
コミュニケーション。
問題が起きたときの対応力。
現場への理解。
プロジェクトマネジメント力。
といった、
数字にしにくい要素
が大きく影響するからです。
「一緒にトラブルを乗り越えられるか」
システム導入では、
必ず問題が起こります。
データ移行がうまくいかない。
店舗から想定外の要望が出る。
スケジュールが遅れる。
新しい運用が現場に定着しない。
システム障害が発生する。
どれだけ優秀な会社でも、
トラブルをゼロにはできません。
だからこそ重要なのは、
トラブルが起きたときに、どう対応する会社なのか
です。
私はベンダー選びでは、
「問題が起きない会社」を探すより、
「問題が起きたときに、一緒に解決してくれる会社」を探す
ことの方が重要だと思っています。
コンペで聞いてほしい5つの質問
もし私が今、小売企業側としてベンダーコンペに参加するなら、次の質問をします。
1.実際の導入責任者は誰ですか?
可能なら、その人にもプレゼンしてもらいます。
2.同規模の導入で一番苦労した事例は何ですか?
成功事例だけではなく、苦労した事例を聞きます。
3.このシステムで、できないことは何ですか?
「できること」ではなく「できないこと」を聞きます。
4.稼働後に問題が起きた場合、誰が対応しますか?
営業だけではなく、具体的なサポート体制を確認します。
5.もし御社が私たちの会社だったら、今回の導入で一番注意する点は何ですか?
これは非常に面白い質問です。
ベンダーが本当にこちらの会社を理解しているかどうかが見えてきます。
コンペで「負けた会社」が実は良かった、ということもある
少し極端な話をします。
コンペで1位になった会社が、
「提案内容も素晴らしい。」
「価格も安い。」
「プレゼンも完璧。」
だったとします。
一方、2位の会社は、
「価格は少し高い。」
「プレゼンも地味。」
でも、
「御社の現状では、この部分は変えた方がいいです。」
「この運用はシステム化しない方がいいと思います。」
「この機能は必要ないと思います。」
と、厳しいことを言ってくる。
私は、
後者の会社にも十分注目してほしい
と思います。
なぜなら、
本当にお客様のことを考えているベンダーは、
何でも「できます」「やりましょう」と言うとは限らないからです。
時には、
「それはやめた方がいいです。」
と言うこともあります。
良いベンダーは「売らない」こともある
これは、元ベンダーだからこそ言える話です。
ベンダーは当然、システムを売りたい。
しかし、
何でも売ればいいわけではありません。
お客様にとって必要のない機能まで導入すれば、
コストが増え、
運用が複雑になり、
現場の負担が増えます。
短期的には売上になります。
しかし長期的には、
「このベンダーに頼まなければよかった。」
と思われてしまうかもしれません。
本当に良いベンダーは、
売上よりも、
導入後にお客様が成功すること
を考えています。
コンペは「ベンダーを選ぶ場」ではない
ここまで読んでいただいて、
「では、コンペは意味がないのか?」
と思われるかもしれません。
もちろん、そんなことはありません。
コンペは非常に重要です。
ただし、
コンペの目的を少し変えて考えてほしいのです。
「一番安い会社を探す。」
「一番機能が多い会社を探す。」
「一番プレゼンが上手な会社を探す。」
ではありません。
「これから何年も一緒に仕事ができる会社を探す。」
そう考えてください。
そうすれば、
見るべきポイントも変わってきます。
まとめ
コンペは、
システム導入において非常に重要なプロセスです。
しかし、
コンペで一番点数が高かった会社が、
必ずしも導入後に一番良いパートナーになるとは限りません。
見るべきなのは、
- プレゼンの上手さだけではない
- デモの華やかさだけではない
- 価格の安さだけでもない
- 機能の多さだけでもない
本当に見るべきなのは、
「この会社と、問題が起きたときに一緒に解決できるか」
ということです。
システム導入では、
必ず問題が起こります。
だからこそ、
問題が起きないことを約束する会社より、
問題が起きたときに逃げない会社
を選んでほしい。
これが、元ベンダーとして私が一番伝えたいことです。
そして、もう一つ。
コンペでベンダーを選ぶとき、
ぜひ、
「この人たちと5年後、10年後も一緒に仕事をしている姿を想像できるか?」
と考えてみてください。
その質問に「はい」と答えられる会社が、
あなたの会社にとって本当に良いベンダーなのかもしれません。
コンペでベンダーを選ぶ時に
私なら、一番重要視するのは
プロジェクト責任者は誰か?
です。
可能であれば、コンペの条件として
「プレゼンは、必ずプロジェクト責任者と営業担当で行ってください」
と条件をつけるのも良いかと思います。
なぜなら、プロジェクト責任者がプレゼンを行うのと
受注後のプロジェクトに関係ない人がプレゼンを行うのでは
まったく、スタンスが違います。
受注するためだけの人がプレゼンを行えば
受注後の事はほとんど考えません。
そのため、提案しているシステムの良い事しか言いません。
なぜなら、その方が受注できる可能性が高いと考えるから。
受注後に、プロジェクトに問題が発生しても、責任をとるのは自分ではないから。
しかし、プロジェクト責任者がプレゼンを行う場合には
受注後のプロジェクトの事を考えます。
そのため、よりリアルな話しをします。
・提案システムで「できる事」と「できない事」
・標準機能でできる事と、カスタマイズしなければできない事
・「お客様」と「ベンダー」の役割分担
など、より真実に近いリアルな話しをするでしょう。
なぜなら、プレゼンの場で安請け合いをしてしまうと
後で困るのは、自分だからです。
コンペでは、ベンダーの組織としての力量や、提案システムの良し悪し
を確認するのも重要ですが、一番は
「誰が、今回のプロジェクト責任者なのか?」
そして、そのプロジェクト責任者は、信用にたる人物なのか?
これを確認してください。
次回は、
というテーマで、大手・中堅・専門ベンダー、それぞれの特徴と、小売企業がベンダーの規模だけで判断してはいけない理由についてお話しします。



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