こんにちは。
前回の記事では、
「システム導入で一番大変なのは機械ではなく人だった」
という話を書きました。
今回は、その続きです。
システム導入プロジェクトの最大の山場。
それが、
本番稼働日
です。
長い準備期間を経て、ついに新システムが動き始める日。
利用者にとっては、
「今日から新しいシステムを使う日」
かもしれません。
しかしベンダーにとっては、
「今日、すべてが決まる日」
なのです。
稼働日が近づくと空気が変わる
プロジェクトが始まった頃は比較的穏やかです。
要件定義を行い、
設計を行い、
プログラムを作り、
テストを実施する。
もちろん忙しいですが、まだ修正する時間があります。
ところが本番稼働が1か月後になると空気が変わります。
3週間前。
2週間前。
1週間前。
そして前日。
プロジェクトメンバーの顔色が明らかに変わります。
誰も口には出しませんが、
全員が同じことを考えています。
「トラブル無く無事に稼働するだろうか・・・」
と。
テストで問題がないことと、本番で問題がないことは違う
私も若い頃は、呑気に構えていました。
何度もテストをしているのだから大丈夫なはずだと、、、
しかし経験を積んで解ったことがあります。
テストで成功することと、
本番で成功することは別なのです。
テスト環境では、
- 通信回線が安定している
- データ量が少ない
- 利用者も限定される
しかし本番では違います。
何十人、何百人が同時に利用する。
実際の取引が発生する。
現金が動く。
商品が動く。
発注データが流れる。
たった一つのミスが、
店舗運営そのものに影響を与えることがあります。
だから誰も安心できないのです。
前日の夜は眠れない
これは冗談ではありません。
本当に眠れないのです。
私だけではありません。
ベテランSEも。
プロジェクトマネージャーも。
営業担当も。
みんな眠れません。
夜中に目が覚めて、
「あの設定、大丈夫だったかな」
と考える。
トラブルが発生した夢を見て、目を覚ましたこともあります。
今なら笑い話ですが、
当時は本気でした。
携帯電話が鳴るたびに心臓が止まりそうになったものです。
稼働当日の朝
そして迎える本番当日。
多くの場合、現場には始発に近い時間から集合します。
朝5時。
朝6時。
まだ暗いうちに店舗へ向かうこともありました。
店舗のシャッターが開く。
端末の電源を入れる。
サーバーを確認する。
通信を確認する。
誰も無駄話をしません。
異様な緊張感があります。
普段は冗談ばかり言っている先輩まで無口になります。
本当に怖いのは想定外
経験上、
最も怖いのは大きなバグではありません。
大きな問題はテストで見つかることが多いのです。
怖いのは、
誰も予想していなかった問題です。
例えば、
- 特定の店舗だけ通信できない
- 一部商品のマスタが欠落している
- プリンタの設定が違う
- 特殊な運用だけ考慮漏れがある
こうした問題は本番になって初めて見つかることがあります。
だからベンダーは常に緊張しています。
稼働後1週間が本当の勝負
実は、
稼働日より怖い期間があります。
それは、
稼働後1週間です。
初日は緊張感があります。
全員が注意しています。
ところが数日経つと、
普段の業務が始まります。
利用者も慣れてきます。
そこで新たな問題が見つかることがあります。
だからベンダーは、
本当に安心できるまで何日もかかるのです。
「何も起きなかった」が最高の成功
一般の人から見ると、
トラブルなく終わると印象に残りません。
しかしベンダーの世界では違います。
最大の成功は、
「何も起きなかった」
です。
ニュースにならない。
誰も話題にしない。
利用者が普通に使っている。
それが最高の評価なのです。
元ベンダーとして今思うこと
当時は、
「絶対に失敗できない」
というプレッシャーばかり感じていました。
しかし今振り返ると、
あの緊張感は悪いものではなかったと思います。
それだけ真剣だったのです。
お客様の業務を止めない。
店舗を止めない。
生活者に迷惑をかけない。
その責任感があったからこそ、
眠れない夜を過ごしたのだと思います。
まとめ
システム導入の本番稼働日。
利用者から見れば一日かもしれません。
しかし、その一日のために、
何か月、時には何年もの準備が行われています。
そして、
稼働初日の朝、
私たちベンダーはほとんど眠れていません。
それは自信がないからではありません。
最後まで責任を感じているからです。
今でもシステム切り替えの朝を思い出すと、
本部の担当者の表情、
店舗のバックヤードの空気、
端末の起動音、
初日の発注が無事送信された時の安堵感が蘇ってきます。
あれは間違いなく、
私のベンダー人生の中で最も緊張した時間でした。
次回は、
「ベンダーが本当に恐れていたトラブルTOP5」
についてお話ししたいと思います。
システム障害よりも怖かったものが、実はたくさんあったのです。



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