シリーズ:【元ベンダーが教える】小売システム導入 成功の法則 第四回
- ~大手・中堅・専門ベンダー、それぞれの強みと弱み~
- まず、大手ベンダーの強みとは何か
- 大手ならではの弱点もある
- 「担当者によって印象が全然違う」
- 中堅ベンダーには別の強みがある
- 「会社の大きさ」と「業務知識」は別物
- 小さな専門ベンダーにも魅力がある
- ただし、小さい会社にはリスクもある
- 私がベンダーだった頃に感じたこと
- 「同じ業界の実績」を確認する
- 「導入実績○○社」の数字に惑わされない
- 「自社と似た会社」を紹介してもらう
- 「一番大きい会社」ではなく「自社に合う会社」
- ベンダーの「弱点」を聞いてみる
- 「何でもできます」という会社には注意する
- ベンダー選びは「結婚相手選び」に似ている
- 私なら、ベンダーの「人」を見る
- ベンダー選定で確認したい7つのポイント
- まとめ
~大手・中堅・専門ベンダー、それぞれの強みと弱み~
前回は、
というテーマで、プレゼンやデモだけではベンダーの本当の実力は分からない、というお話をしました。
では、そもそもベンダーを選ぶとき、
「どんな会社を選べばいいのか?」
という疑問が出てきます。
そこで、よく聞くのが、
「やっぱり大手の有名な会社を選んでおけば安心でしょう。」
という言葉です。
確かに、大手ベンダーには大手ならではの安心感があります。
会社としての信用力。
豊富な導入実績。
人材の多さ。
サポート体制。
どれも重要です。
しかし、元ベンダーとして20年以上この業界を見てきた私からすると、
「大手だから安心」とは、必ずしも言えません。
逆に、
「中堅だからダメ」
「小さい会社だから危ない」
ということでもありません。
大切なのは、
「そのベンダーが、自社に合っているか」
です。
今回は、大手・中堅・専門ベンダー、それぞれの特徴を考えてみたいと思います。
まず、大手ベンダーの強みとは何か
大手ベンダーの最大の強みは、
「会社としての総合力」
でしょう。
例えば、
- 全国規模のサポート体制
- 多数の技術者
- 豊富な導入実績
- セキュリティ対策
- 大規模プロジェクトの経験
- 長期的な事業継続性
- 他システムとの連携力
こうした部分は、大手ならではの強みです。
特に、
数百店舗、数千店舗を持つ企業や、
全国規模で事業を展開する企業では、
大規模なプロジェクトを経験していることは非常に大きな安心材料になります。
また、
「導入した会社が数十社、数百社ある」
という実績は、それだけで価値があります。
過去のトラブルや失敗から学んでいるからです。
大手ならではの弱点もある
一方で、
大手だからこその弱点もあります。
その一つが、
「組織が大きいこと」
です。
例えば、何か問題が起きたとき、
担当SEだけでは判断できない。
↓
上司に確認する。
↓
別部署に確認する。
↓
さらに専門部署に確認する。
↓
ようやく回答が来る。
ということがあります。
もちろん、大手企業はルールや責任分担が明確です。
それは品質を安定させるためには必要なことです。
しかし、
小回りの利かなさ
につながる場合があります。
「担当者によって印象が全然違う」
大手ベンダーでよくあるのが、
「会社は大きいけれど、担当者によって実力差がある」
ということです。
これは大手に限った話ではありませんが、
組織が大きくなれば、当然さまざまな人がいます。
非常に優秀なSEもいます。
一方で、
「この人に任せて大丈夫だろうか?」
と思うこともある。
つまり、
「○○社だから安心」
ではなく、
「○○社の、誰が担当するのか」
まで見なければいけません。
私が所属していたベンダーは、規模的には
中の小くらいの規模のベンダーでした。
そのため、時には大手ベンダーの下請けとして
プロジェクトに参加することもありました。
大手で有名なベンダーのプロジェクト責任者やSE・営業
などと仕事をする経験も多かったと思います。
その経験から、声を大にして言える事が
「大手ベンダーのSEだから優秀ということはない」
ということです。
もちろん、
「この人はすごいな!」
と思える人もたまにはいます。
しかし、逆に
「この人がプロジェクトリーダーで、このプロジェクト大丈夫か?」
と不安になることも多かったです。
中堅ベンダーには別の強みがある
では、中堅ベンダーはどうでしょうか。
私は、
「小売業に特化した中堅ベンダー」
には、大手にはない魅力があると思っています。
例えば、
「食品スーパーのシステムなら誰にも負けない。」
「ドラッグストアの業務を徹底的に理解している。」
「小売の店舗運営を知り尽くしている。」
そんな会社です。
会社の規模は大きくなくても、
特定の業界については圧倒的な経験を持っている。
これは非常に大きな強みです。
「会社の大きさ」と「業務知識」は別物
ここは、ベンダー選びでぜひ覚えておいてほしいところです。
例えば、
従業員1万人の会社でも、
小売業の経験がほとんどない。
一方で、
従業員100人の会社でも、
食品スーパーのシステムを30年間作ってきた。
どちらが自社に合うでしょうか。
もちろん一概には言えません。
しかし、
会社の規模だけでは判断できない
ということは分かると思います。
小さな専門ベンダーにも魅力がある
さらに小さな専門ベンダーもあります。
社員数は数十人。
営業担当も少ない。
知名度もそれほど高くない。
でも、
「この業務については、うちが一番詳しい。」
という会社です。
こうした会社には、
「経営者や責任者との距離が近い」
というメリットがあります。
意思決定が早い。
要望に対する反応も早い。
担当者が長期間変わらない。
こうした点は、大きな魅力です。
ただし、小さい会社にはリスクもある
もちろん、良いことばかりではありません。
小規模ベンダーでは、
- 担当者が少ない
- 特定の人に知識が集中している
- その人が退職すると困る
- 大規模障害への対応力が限られる
- 会社の経営状況に影響されやすい
といったリスクがあります。
特に、
「その会社の○○さんしか、このシステムを分からない」
という状態は注意が必要です。
担当者が優秀であることは素晴らしい。
しかし、
「その人がいなくなったらどうなるのか?」
も確認しておく必要があります。
私がベンダーだった頃に感じたこと
私がベンダーだった頃、企業規模を理由として
コンペに負けることが何回かありました。
「御社は大手ではないから、そこが少し心配です。」
と言われたこともあります。
そのとき私は、
「会社の規模だけで判断されるのは、少し違うのにな。」
と思っていました。
私たちにも、
「この業界のことなら大手より詳しい。」
という自負がありました。
実際、特定の小売業務については、
長年その業界だけを見てきたからこそ分かることがありました。
システムの機能だけではなく、
「現場が実際にどう仕事をしているか」
を理解していること。
これは、規模とは別の価値です。
「同じ業界の実績」を確認する
では、実際にどうやって見極めればいいのでしょうか。
私なら、
「同じ業界・同じ規模の実績」
を最初に確認します。
例えば食品スーパーなら、
「食品スーパーの導入実績は何社ありますか?」
だけではなく、
「自社と同じくらいの店舗数の会社は?」
「同じくらいの売上規模の会社は?」
「同じような商品構成の会社は?」
と聞いてみます。
さらに、
「その会社では、どんな課題がありましたか?」
と聞いてみる。
ここまで聞くと、
そのベンダーが本当に業務を理解しているのかが見えてきます。
「導入実績○○社」の数字に惑わされない
ベンダーの提案書には、
「導入実績500社!」
などと書かれていることがあります。
もちろん実績は重要です。
しかし、
500社すべてが同じシステムをフル機能で導入したとは限りません。
例えば、
「POSだけ導入した会社」が450社。
「基幹システムまで導入した会社」が50社。
ということもあります。
だから、
実績の数だけではなく、中身を見る
ことが重要です。
「自社と似た会社」を紹介してもらう
私なら、コンペの段階で、
「御社のシステムを導入している会社で、当社と一番似ている会社を教えてください。」
と聞きます。
そして可能なら、
実際にその会社を見学させてもらう。
これが非常に有効です。
提案書には書かれていない、
- 実際の店舗でどう使われているか
- 現場は本当に便利になったのか
- 導入後に何が問題になったのか
- ベンダーの対応はどうだったのか
を聞くことができます。
もちろん、ベンダーが紹介する会社なので、
すべてが本音とは限りません。
それでも、
実際に使っている会社の話を聞く
ことには大きな意味があります。
「一番大きい会社」ではなく「自社に合う会社」
ここまで読んでいただければ、
私が何を言いたいのか分かっていただけると思います。
ベンダー選びで重要なのは、
「一番大きな会社を選ぶこと」ではありません。
「自社に一番合った会社を選ぶこと」
です。
例えば、
全国に1000店舗ある企業なら、
大手ベンダーの総合力が大きな武器になるかもしれません。
一方、
30店舗の食品スーパーなら、
小売業に特化した中堅ベンダーの方が、
きめ細かく対応してくれるかもしれません。
もちろん、これはあくまで一例です。
重要なのは、
「自社の課題に対して、どの会社が一番力を発揮できるのか」
を考えることです。
ベンダーの「弱点」を聞いてみる
もう一つ、ぜひやってほしいことがあります。
コンペの場で、
「御社のシステムの弱点は何ですか?」
と聞いてみてください。
これは意外と効果があります。
すぐに、
「特にありません。」
と答える会社。
少し考えて、
「ここは他社製品より弱いと思います。ただし、こういう運用でカバーできます。」
と答える会社。
私は後者の方を信用します。
自社製品の弱点を理解しているということは、
自分たちのシステムを客観的に見ている
ということだからです。
「何でもできます」という会社には注意する
前回の記事でも少し触れましたが、
ベンダー選定では、
「何でもできます。」
という言葉には注意してください。
システムには必ず、
得意なことと苦手なことがあります。
完璧なシステムなどありません。
だからこそ、
「これは得意です。」
「これは標準では難しいです。」
「この部分は他社製品を使った方がいいと思います。」
と正直に言えるベンダーの方が、
長く付き合う相手としては安心できます。
ベンダー選びは「結婚相手選び」に似ている
少し大げさに聞こえるかもしれませんが、
私はベンダー選びは、
結婚相手選びに似ている
と思っています。
コンペでは、
みんな一番いい服を着てきます。
いいところを見せます。
当然です。
しかし、
一緒に生活を始めてからが本番です。
システムも同じです。
コンペのプレゼンは、
「お見合い」のようなもの。
契約は、
「結婚」。
導入プロジェクトは、
「新生活のスタート」。
そして、
保守・運用は、
その後何年も続く生活です。
そう考えると、
「コンペで一番かっこよかった会社」
だけで決めることが、
少し怖く感じてきませんか。
私なら、ベンダーの「人」を見る
最終的に私が一番大切だと思うのは、
人です。
もちろん、
製品の機能も重要です。
価格も重要です。
会社の信用力も重要です。
しかし、
システム導入では、
必ず人と人がぶつかります。
意見が合わないこともあります。
予定通り進まないこともあります。
トラブルも起きます。
そんなとき、
「契約書に書いてありますから。」
だけで終わる会社なのか。
それとも、
「どうすれば解決できるか、一緒に考えましょう。」
と言ってくれる会社なのか。
この違いは、
何年も付き合うほど大きくなります。
ベンダー選定で確認したい7つのポイント
最後に、私なら次の7項目を確認します。
1.自社と同じ業界の実績があるか
単なる導入社数ではなく、中身を見る。
2.自社と同じ規模の会社を担当した経験があるか
店舗数、売上規模、業態などを確認する。
3.実際の導入担当者は誰なのか
会社ではなく「人」を見る。
4.導入後のサポート体制はどうなっているか
担当者が退職した場合も確認する。
5.システムの弱点を説明できるか
「何でもできます」には注意する。
6.過去の失敗事例を話してくれるか
成功事例だけではなく、失敗から何を学んだのかを見る。
7.トラブルが起きたときに一緒に解決してくれそうか
これが最後に一番重要なポイントです。
まとめ
「有名なベンダーだから安心。」
「大手だから間違いない。」
これは、必ずしも正しくありません。
もちろん大手には、大手ならではの強みがあります。
中堅には中堅の強みがあり、
専門ベンダーには専門ベンダーの強みがあります。
大切なのは、
会社の大きさではなく、自社との相性です。
自社と同じような会社をどれだけ知っているか。
自社の業務をどれだけ理解しているか。
導入後もきちんと支えてくれるか。
そして、
問題が起きたときに、一緒に解決してくれるか。
そこまで見てベンダーを選んでほしいと思います。
システムは、
一度買って終わりの商品ではありません。
5年、10年、場合によってはそれ以上使い続けます。
だからこそ、
「どこの会社か」だけではなく、
「誰と一緒に仕事をするのか」
を見てください。
それが、ベンダー選定で失敗する可能性を減らす、一番大切なポイントの一つだと思います。
ベンダーの会社案内に、
「導入実績○○社」
と書いてあったら、
「その中で、私たちと一番似ている会社はどこですか?」
と聞いてみてください。
そして、もう一つ。
「その会社で一番苦労したことは何ですか?」
と聞いてみてください。
ここで具体的な話が出てくるかどうか。
私は、これだけでもベンダーの本当の経験値をかなり見極められると思っています。
ベンダー選びで重要なのは、
「自社より大きな会社を選ぶこと」ではありません。
「自社のことを、自分たちと同じくらい理解してくれる会社を選ぶこと」
です。
次回は、
についてお話しします。
実は、ベンダー側から見ると、
「このプロジェクトは、ちょっと危ないな。」
と、契約前から感じる案件があります。
では、どんな会社がそう見えてしまうのでしょうか。
元ベンダーだからこそ分かる、少し耳の痛い話をしてみたいと思います。



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