バーコードが当たり前になるまでの苦労話

昔の流通システム

今ではスーパーやドラッグストア、コンビニで買い物をすると、店員さんは商品を「ピッ」とスキャンするだけです。

あまりにも当たり前の光景なので、多くの人は気にも留めないでしょう。

しかし、私が小売システムの世界に入った頃は、バーコードが付いていない商品も珍しくありませんでした。

今では数秒で終わるレジ業務も、当時はもっと手間がかかっていたのです。

今回は、バーコードが当たり前になるまでの舞台裏をお話ししたいと思います。

バーコードがない時代のレジ

POSレジが普及する前、多くの店舗では「部門打ち」が一般的でした。

例えば、

  • 野菜は「101」
  • 精肉は「201」
  • 惣菜は「301」

といった部門コードを店員が手入力していました。

金額も基本は手入力で、商品に貼り付けてある値札を見てレジ担当者が入力します。

そのためには、全ての商品に値札を貼り付ける作業が必要になります。

今では考えられませんが、それが当たり前だったのです。

もちろん、人が入力する以上、打ち間違いも起こります。

レジ担当者の経験が、そのまま店舗の会計品質を支えていました。

「JANコード」という新しい考え方

バーコードが普及するきっかけになったのが「JANコード」です。

それまで「商品名」で管理していたものを、「番号」で管理するという考え方でした。

メーカーが商品ごとにコードを付け、レジではその番号を読み取るだけ。

これにより、

  • 商品に値札を貼る必要がない
  • 商品を見て部門が解る必要がない
  • 入力ミスが減る
  • 売上データを正確に集計できる

という大きなメリットが生まれました。

今では当たり前ですが、当時はとても画期的な仕組みだったのです。

「ピッ」と読めない時代もあった

現在のバーコードリーダーは、多少傾いていても簡単に読み取ります。

しかし、昔はそうはいきませんでした。

バーコードの向きを合わせる。

距離を調整する。

ゆっくり通す。

それでも読めないことがあります。

「ピッ」と鳴らないと、もう一度。

それでもダメなら手入力。

レジ担当者は、バーコードを読む「コツ」まで身につけていました。

機械の性能も今ほど高くはなかったのです。

バーコードが付いていない商品はどうする?

バーコードが普及し始めた頃は、すべての商品にコードが付いていたわけではありません。

特に、

  • 野菜
  • 果物
  • 生鮮食品
  • 店内加工品

などはバーコードがない商品も多くありました。

そのため、

バーコード商品はスキャン。

それ以外は手入力。

という運用がしばらく続きました。

そのような不便な状況を解決するために、計量器やパッキングのメーカーが

店内でパッキングした商品に貼り付けるラベルにバーコードを印刷できるように

機能を開発しました。

このように店内で作成するバーコードをインストアマーキングと言いました。

現場にとっては、

昔と新しい仕組みが混在する大変な時代だったのです。

バーコードが変えたのはレジだけではない

バーコードの本当の価値は、レジ業務の効率化だけではありません。

売上が商品単位で記録されるようになったことで、

  • 何が売れているか
  • 何が売れていないか
  • いつ売れたか
  • どの店舗で売れたか

が正確にわかるようになりました。

これは小売業にとって革命でした。

そのデータは、

発注や在庫管理、販売計画へと活用されるようになり、

後にEOSや自動発注システムへとつながっていきます。

つまり、

バーコードはPOSのためだけではなく、小売DXの出発点だったと言えるでしょう。

現場では意外な苦労もあった

バーコードが普及すれば、誰もが喜ぶと思っていました。

ところが現実はそう簡単ではありませんでした。

「スキャナーの方が時間がかかる。」

「番号を打った方が早い。」

「機械が読んでくれない。」

そんな声も少なくありませんでした。

実際、ベテランのレジ担当者の中には、手入力の方が速い人もいました。

新しい仕組みが必ずしも最初から歓迎されるわけではない。

これは、その後のPOS導入やEOS導入でも何度も経験したことです。

バーコードは「共通言語」になった

私が特にすごいと思うのは、バーコードが業界全体の共通言語になったことです。

メーカー。

卸売業。

物流センター。

店舗。

すべてが同じ商品コードを使う。

これによって、

受発注も、

物流も、

在庫管理も、

売上分析も、

一つのコードでつながるようになりました。

現在の流通システムは、この共通コードの上に成り立っています。

シンプルですが、とても偉大な仕組みです。

今ではスマホでも読める時代

昔は高価だったバーコードリーダー。

現在ではスマートフォンでも簡単に読み取れます。

商品の価格を調べたり、

在庫を確認したり、

ポイントを利用したり。

バーコードは、業務だけでなく、私たち消費者の日常にも溶け込んでいます。

40年前には想像もできなかった世界です。

元ベンダーとして思うこと

バーコードは、とても地味な技術です。

派手なAIのような話題性もありません。

しかし、

バーコードがなければ、

POSも、

EOSも、

自動発注も、

AI需要予測も、

ここまで発展することはなかったでしょう。

長年システムに携わってきて感じるのは、

本当に世の中を変える技術は、派手ではなく「当たり前」になる技術なのだということです。

バーコードは、まさにその代表例だと思います。

まとめ

今では当たり前のバーコード。

しかし、その裏側には、

  • 新しい運用への戸惑い
  • 機械の性能との戦い
  • 現場の努力
  • ベンダーの試行錯誤

がありました。

技術は一夜にして普及するものではありません。

多くの人が使い、改善を重ね、少しずつ「当たり前」になっていくものです。

スーパーで商品を「ピッ」とスキャンする音を聞くたびに、私は少しだけ昔を思い出します。

あの小さなバーコードが、日本の小売業を大きく変えた瞬間を、私は現場で見ることができました。

次回は、

「JCA手順という日本独自規格が流通業界を支えた時代」

というテーマで、インターネットが普及する前、受発注データをどのようにやり取りしていたのかをご紹介したいと思います。

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