こんにちは。
小売システムの導入というと、
- 新しいPOSレジ
- EOSや自動発注システム
- AI需要予測
- ハンディターミナル
など、どうしても「機械」や「システム」に目が向きがちです。
しかし、20年以上にわたり小売システムの導入に携わってきた私が断言できることがあります。
システム導入で一番大変なのは、機械ではなく人です。
今回は、システム導入の現場で本当に苦労したことについてお話ししたいと思います。
システムは予定通り動く
誤解を恐れずに言えば、機械は意外と素直です。
もちろん、
- プログラムの不具合
- 通信障害
- 設定ミス
などのトラブルはあります。
しかし、原因がわかれば修正できます。
テストもできます。
改善もできます。
つまり、
機械は論理で動く
のです。
一方、人はそうはいきません。
「今までのやり方で困っていない」
これは導入説明会で何度聞いたかわからない言葉です。
「今までこれでやってきた。」
「今までのやり方を変えないでくれ」
「今さら新しいことを覚えることはできない」
「これで本当に我々は楽になるのか?」
現場からすると当然です。
長年続けてきた仕事のやり方を変えるのですから、不安になります。
新しい操作を覚える負担もあります。
「本当に便利になるのか」
という疑問もあります。
しかし、ベンダー側は、
「新システムの方が効率的だから」
と説明してしまいがちです。
ここに最初の溝が生まれます。
人は変化そのものを嫌う
導入プロジェクトで学んだことがあります。
それは、
人は新システムを嫌っているのではなく、変化を嫌っている
ということです。
例えば、
今まで紙に書いていた発注をタブレットに変える。
これだけでも、
「面倒になった」
と感じる人はいます。
たとえ最終的には効率化されるとしても、
慣れるまでの負担は確実に存在します。
私自身、
「このシステムは絶対に便利になる」
と思って提案したものが、現場では強い反発を受けたことが何度もありました。
今振り返ると、
便利さを説明することばかり考え、
変化への不安に寄り添えていなかったのかもしれません。
ベテランほど抵抗する…とは限らない
これも意外だったことです。
よく、
「ベテランは新システムを嫌がる」
と言われます。
確かにそういうケースもあります。
しかし実際には、
積極的に協力してくれるベテランもたくさんいました。
逆に、
若手社員の方が、
「前のやり方の方が良かった」
と抵抗することもありました。
結局のところ、
年齢ではありません。
その人が、
- 導入の目的を理解しているか
- 自分にメリットがあると感じているか
- 不安を解消できているか
が重要なのです。
一番危険なのは「現場を巻き込まないこと」
導入がうまくいかなかったプロジェクトには共通点がありました。
それは、
現場の意見を聞いていないこと
です。
本部だけでシステムを決定する。
ベンダーと本部だけで仕様を決める。
そして完成後、
「来月からこれを使ってください。」
当然、現場は混乱します。
「こんな機能がほしかった。」
「この操作では業務が回らない。」
「誰がこんなことを決めたんだ。」
こうなってしまいます。
一方で、成功したプロジェクトでは、
現場担当者が最初から参加していました。
だからこそ、
本当に使いやすいシステムになったのです。
システム導入は「教育プロジェクト」
ベンダー時代、私は途中から考え方を変えました。
システム導入は、
ITプロジェクトではなく教育プロジェクト
だと。
操作説明会を開く。
マニュアルを作る。
質問に答える。
成功事例を共有する。
「使い方」だけではなく、
「なぜ導入するのか」
を理解してもらう。
これに時間をかけたプロジェクトほど、定着率が高かったのです。
現場の小さな成功体験が大切
ある店舗では、
最初は自動発注に強い抵抗がありました。
しかし、
「この商品だけ試してみましょう」
と小さく始めました。
すると、
「思ったより欠品しない。」
「発注時間が短くなった。」
という声が出始めました。
それが徐々に広がり、
最終的には店舗全体で活用されるようになりました。
人は、
説明だけでは変わりません。
自分で成功を体験することで変わる
のだと思います。
元ベンダーとして反省していること
若い頃の私は、
「良いシステムなら必ず受け入れられる」
「システムが正しく稼働すれば、プロジェクトは成功である」
と思っていました。
しかし、それは違いました。
どれほど優れたシステムでも、
使う人に受け入れられなければ意味がありません。
逆に、
完璧ではないシステムでも、
現場が納得しながら育てていけば成功することもあります。
技術よりも、
コミュニケーション。
機能よりも、
信頼関係。
今ではそう感じています。
システム導入の成功条件
これまでの経験から言えることがあります。
システム導入を成功させるためには、
① なぜ導入するのかを共有する
「会社が決めたから」ではなく、
目的を理解してもらう。
② 現場を最初から巻き込む
実際に使う人の意見を取り入れる。
③ 小さく始める
いきなり全社導入ではなく、成功体験を積む。
④ 教育に時間をかける
操作説明だけでなく、不安を解消する。
⑤ 導入後も改善を続ける
導入・本稼働はゴールではなくスタート。
この5つが非常に重要だと思います。
まとめ
システム導入で一番大変なのは何か。
私の答えは、
「機械ではなく人」
です。
しかし、それは決して悪いことではありません。
システムは、人が使うための道具です。
だからこそ、
人の理解や納得なしに成功することはありません。
逆に言えば、
現場と一緒に作り上げていけば、
多少不完全なシステムでも十分成果を上げられます。
元ベンダーとして最後に伝えたいのは、
「システム導入は、ITの問題ではなく、人の問題である」
ということです。
そして、
人が変われば、システムは成功する。
これが、私が数多くの導入現場で学んだ最大の教訓でした。
次回は、
「稼働初日の朝、私たちはなぜ眠れなかったのか」
というテーマで、システム切り替え当日の緊張感についてお話ししたいと思います。


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