自動発注はなぜ期待通りに動かないのか

昔の流通システム

こんにちは。

小売業界では昔から、「自動発注」が夢のシステムとして語られてきました。

「システムが勝手に適正在庫を維持してくれる」
「発注担当者の経験や勘に頼らなくてよくなる」
「欠品も過剰在庫もなくなる」

そんな期待を抱いて導入した企業は数え切れません。

しかし、私がベンダーとして数多くの現場を見てきた経験から言うと、自動発注が期待通りに機能している企業は意外なほど少ないのです。

今回は、その理由についてお話ししたいと思います。

自動発注の基本的な考え方

自動発注の仕組み自体はそれほど難しいものではありません。

過去の販売実績から将来の売上を予測し、

  • 何個売れそうか
  • 納品まで何日かかるか
  • 安全在庫をどれだけ持つか

を計算して発注数量を決めます。

理論上は非常に合理的です。

ところが、実際の店舗では理論通りにはいきません。

システムは過去しか知らない

自動発注システムが利用できる情報の多くは過去の販売実績です。

例えば、

「先週は10個売れた」
「先月は平均8個売れた」

というデータから次回の発注数を計算します。

しかし現場では、

「明日テレビで紹介される」
「近所の競合店が閉店した」
「類似の新商品が発売された」
「急に暑くなった」
「運動会がある」

といった出来事が毎日のように発生します。

ベテラン担当者はこうした情報を頭に入れながら発注します。

一方でシステムは、基本的に過去の数字しか知りません。

つまり、自動発注は未来を予測しているようでいて、実は過去を延長しているだけなのです。

一番の問題はマスターデータ

自動発注が失敗する原因として最も多いのが、実はシステムではありません。

商品マスターです。

例えば、

  • リードタイムが間違っている
  • 最低発注数量が古いまま
  • ケース入数が変更されている
  • 廃番予定が登録されていない

こうした状態で自動発注を動かすと、当然ながら結果もおかしくなります。

よく現場では、

「自動発注がバカだから」

と言われます。

しかし調べてみると、

「設定したデータが間違っていた」

というケースが非常に多いのです。

コンピュータは正しいデータを正しく計算します。

逆に言えば、間違ったデータも正確に計算してしまいます。

特売は自動発注の天敵

小売業で欠かせないのが特売です。

ところが特売は自動発注にとって非常に扱いにくい存在です。

例えば通常100個売れる商品が、

特売期間中は500個売れることがあります。

この特売実績を通常販売実績として学習してしまうと、

翌週には大量発注を行い、売れ残りが発生します。

逆に特売情報を考慮しないと欠品になります。

この調整は昔から非常に難しく、多くのシステム担当者やベンダーが苦労してきました。

発注担当者の「勘」は意外と優秀

システム導入時によく聞く言葉があります。

「人の勘を排除したい」

というものです。

確かに勘だけに頼る運営には問題があります。

しかし長年売場を見てきた担当者は、数字にならない情報を大量に持っています。

例えば、

「今日は雨だから客数が少ない」
「近所で祭りがある」
「この商品は月末に売れる」

といった知識です。

こうした経験値は、実はかなり高い精度を持っています。

私が見てきた優秀な店舗では、

システムと人間が競争するのではなく、

システムが計算し、人間が最終判断する

という運用になっていました。

システムに期待しすぎる

もうひとつ、自動発注で失敗する要因が

「自動発注なのだから、人間は何もしなくても適正在庫を維持できる」

と、システムに期待しすぎてしまう例です。

本来は、自動発注で発注作業にかかる手間を省力化した分

現場担当者は、

「新商品は発売されていないか」
「魅力的な品揃えになっているか」
「棚割りは、消費者にとって買い周りしやすい棚割りになっているか」

など、品揃えや商品陳列の仕方などを、より魅力的になるように考える時間にあてる事が必要です。

しっかりと、システムと現場担当者の役割分担を意識することが重要です。

ベンダーが言わない本当の話

ここで少し業界の裏話をします。

自動発注システムの提案資料には、

「発注作業を大幅削減」
「欠品削減」
「在庫削減」

といった言葉が並びます。

もちろん嘘ではありません。

しかし現実には、

自動発注導入後も、

  • パラメータ調整
  • マスタ整備
  • 特売登録
  • 発注チェック

が必要です。

つまり発注作業そのものは減っても、管理作業はなくならないのです。

この点を誤解して導入すると、

「こんなはずではなかった」

となります。

自動発注の本当の価値

では自動発注は意味がないのでしょうか。

そんなことはありません。

むしろ現在の小売業には欠かせない仕組みです。

人手不足が進む中、何万アイテムもの発注を人間だけで処理することは現実的ではありません。

自動発注の価値は、

「人間を不要にすること」

ではなく、

「人間が重要な商品に集中できるようにすること」

にあります。

売れ筋商品や重点商品は人が確認する。

定番商品はシステムに任せる。

この役割分担ができた企業ほど成果を上げています。

まとめ

私がベンダー時代に学んだことがあります。

それは、

「システムは現場を楽にすることはできるが、現場の代わりにはなれない」

ということです。

自動発注も同じです。

魔法の仕組みではありません。

過去データを活用し、人間の判断を支援する道具です。

期待し過ぎると失敗します。

しかし正しく使えば、欠品も在庫も発注業務も大きく改善できます。

重要なのは、

「システムか人間か」

ではなく、

「システムと人間をどう組み合わせるか」

なのです。

次回は、

「発注担当者の勘は本当に不要になるのか」

について、さらに深掘りしてみたいと思います。

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